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第二話


 城内をさ迷う鳥の翼を背中に生やした少年は、助けを求める悲鳴を聞き足を止める。
 聞こえてくるのは、荒れ果て陰気なこの廃城には似つかわしくない若い娘の声である。
 少年は粗雑に短く刈り込んだ髪に手をやり、少しの逡巡の後、意を決したように声のする方に向かう。

 声を頼りに進んだ先で、少年はうねうねと動く蔦に絡まれ身動きがとれなくなっている猫の獣娘の姿を発見する。
 獣娘は、少年の姿を認めると最初は助けを懇願するが、その背中に生えた鳥の翼に気付くと態度を一変する。
 どうやら、獣人達の国と有翼の少年の国は戦争状態にあるらしい。
 有翼の少年は、獣娘の剣幕に面喰いながらも腰の剣を抜き、絡みついた蔦と格闘を始める。

 少年は、剣を持つこと自体になれていないながら、奮闘のかいあり獣娘の救出に成功する。
 再度二人を絡めとろうと迫る動く蔦から逃げ延びるため二人は、その場を足早に逃げ去る。
 気が付けば持っていた剣も短刀も無くしていることに気付く。

 そんな二人を待ち受けていたのは、獣娘が最初に追っていたネズミであった。
 ただしその体躯は大きな猫ほどもあり、数は、両手の指だけでは数えきれないほどの群れになっている。

 四方を取り囲むように迫ってくる、ネズミの群れを見て、ようやく二人は悟る。
 この城において、自分達は狩る側ではなく狩られる側なのである。

 

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