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第四話


 妖精族の少年に案内された小部屋で、有翼の少年と猫の獣娘を一人の女性が出迎える。
 女性の纏う修道服は所々裂けており、両足は鎖付きの枷で繋がれている。
 妖精族であることを示す背中の羽はボロボロに破れ、彼女が訳有りであることを物語る。
 暗く沈んだ表情を浮かべながら、ただ髪に挿した一輪の百合の花が唯一生気を放っている。
 
 その姿を見た猫の獣娘は見知った者の名を呼ぶ。
 妖精族の女性は、その名が自らのものであることに驚きの表情を見せるが、獣娘とは面識がないと告げる。
 不審に思いながらも猫の獣娘は、確かに知人と比べ少し若く見えることを認める。
 
 妖精族の女性は、妖精族の少年が連れてきた二人の怪我の手当を申し出る。
 彼女の学んできた信仰の為す技は、瞬く間に動く蔦との格闘で出来た傷を癒していく。
 礼を述べる二人に、妖精族の女性はようやく笑顔を見せる。
 彼女は、癒しの技がまだ使えることで信仰が全て失われた訳ではないことを確かめ安堵する。
 
 城に迷い込んで初めて訪れた安らぎの時間は、しかし乱入してきた男たちにより終わりを告げる。

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