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第三話


 獰猛なネズミの群れに追い詰められた猫の獣娘と有翼の少年を救ったのは、場違いなリュートの音色である。
 不意に耳に入ってきたその音色は、周囲を取り囲むネズミたちを眠りへと誘う。
 ネズミ達と同様、強烈な眠気に襲われた二人に、いつのまにか近づいた妖精族の少年が声をかける。
 少年は、自分についてくるように二人の手を引くと、足早にその場を離れる。

 十分に距離をとったと判断した妖精族の少年は、息を切らしながらもまずは二人に横柄な態度で感謝を促した。
 有翼の少年は戸惑いながらも真剣に、猫の獣娘はしぶしぶと感謝の言葉を妖精族の少年に伝える。
 妖精族の少年は、二人の感謝の言葉を聞くと、背中に生えた妖精族特有の透明な羽をパタパタとさせ、満足気な表情を浮かべる。
 そして聞かれてもいないのに、先程二人を救ったリュートの説明を自慢げに始める。
 曰く、この城までの道中で拾ったリュートには、生物を眠りに誘う魔法の力があるのだという。
 感心した二人が、この城の出口を尋ねると、妖精族の少年は途端に口を濁す。

 妖精族の少年もまた、最近この城に足を踏み入れ、そして出られなくなったことに変わりはないのである。
 誤魔化すように他にも一人、場内で出会った仲間がいることを妖精族の少年は二人に伝える。
 妖精族の少年に促されるまま、二人はそのもう一人の仲間の元に向かう。

 

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